建築写真に適したカメラとレンズの基本知識 失敗しない選択ポイント

建築写真で重視すべきカメラの選択基準

建築写真を始めるとき、多くの人が最初に悩むのが「必要な機材は何か」だと思います。建築写真では建物の形を正確に残すこと、壁や床の質感を細かく描写することが求められます。よってカメラは出来るだけ高解像度で暗い場所でもノイズが少なく撮影できる性能が重視されます。

また、室内を撮影する際など室内の明るさに比べて窓からの光が強い場合は、明暗差が大きく逆光の状態になります。よって、部屋の明るさに露出を合わせると窓の外は白飛びし、逆に窓の外に露出を合わせると部屋が暗くなってしまうので美しくありません。

最新モデルでなくても十分対応できますが、明るいところも暗いところもしっかりと撮影が出来る、いわゆるダイナミックレンジが広い性能を持つ=フルサイズ以上のカメラが望ましいです。

広角レンズを選ぶ際の注意点

カメラ本体に次いで必須となるのが「広角レンズ」です。広角レンズは普通のレンズでは収まりきらない空間を一枚に収められるため、狭い室内や大きな建物を撮影する際に欠かせません。ただし、近くのものを大きく、遠くのものを小さく写す、パースペクティブ(遠近感)を強調する効果があるので、実際よりも空間が広がって見えすぎてしまい、不自然な印象を与えてしまうという欠点もあります。狭い空間でも一枚に収められるというメリットがありますが、このような特性や効果を理解しながら撮影することが非常に重要です。

一般的に広角レンズとは焦点距離がフルサイズ換算で24mm~35mmと言われますが、一枚で空間を収めたいときに狭いことが多いので、より広角の12mm〜16mmの「超広角レンズ」を使用すると便利です。超広角の単焦点レンズもありますが、幅広く焦点域を調整できるズームレンズがおすすめです。

シフトレンズで建物を正確に撮影する

建築写真では「シフトレンズ」も重要な機材の一つです。シフトレンズは、簡単にいうとカメラを傾けずにレンズを上下左右に動かせるため、建物の垂直を正確に保ったまま撮影できます。通常のレンズで建物を下から見上げて撮ると、上に行くほど細く見えてしまいますが、シフトレンズを使えば自然な形で建物全体を表現できます。

これは建築写真で「正確さ」を求めるときに欠かせないポイントです。撮影後に編集ソフトでの歪み補正も可能ですが、画質が劣化したり端が切れてしまったりするリスクがあります。現場でシフトレンズを使うことで、最初から完成度の高い写真を得られるため、必要な機材として位置付けるべき存在です。

撮影現場で使いやすいレンズ構成例

建築写真の現場では状況に応じてレンズを使い分けることが大切です。私が普段使用している構成は以下のとおりです。

  • 12〜24mmの超広角ズームレンズ:室内外で幅広く対応できる基本レンズ。
  • 16〜35mmの超広角レンズ:超広角域でPLフィルターを使用して撮影したいときに。
  • 24mm〜70mm(105mm)の標準ズームレンズ:パースペクティブを抑えて空間を撮影したい時やイメージカット撮影に。
  • シフトレンズ(17mm):歪みを抑え、建物を正確に写すために必須。

状況に合わせてレンズを切り替えることで、建物全体の迫力から細部のディテールまで幅広く表現できます。

まとめ

建築写真に必要な機材は、カメラやレンズの選び方によって大きく仕上がりが変わります。

  • カメラは高解像度とダイナミックレンジ性能を重視して選ぶ(可能であればフルサイズ以上のカメラ)
  • 超広角レンズは必須、特徴に注意して活用する
  • シフトレンズは正確さを確保するために必要
  • レンズ構成は超広角・シフト・標準を組み合わせて柔軟に使い分ける

これらを意識すれば、現場での撮影精度が高まり、建築写真の魅力を最大限に引き出せるはずです。

投稿者プロフィール

迎崇
迎崇photographer
1975年 石川県羽咋市生まれ、金沢市在住。
小学生の頃、祖父の影響で写真を撮りはじめる。大学卒業後、IT系企業にて顧客を担当マネージャーとして尽力していたが、写真への思いを捨てきれず2017年から写真家としての活動を開始。日常の中にある一瞬を心象的に表現する創作活動を進めている。商業写真の分野では住宅や商業施設などの建築写真撮影を中心に活動しており、撮影実績は1,000棟以上。雑誌、業界紙での掲載多数。
撮影ツアーの企画開催、ワークショップ講師としても活動中。